大分の観光業・宿泊業向け|多言語対応ホームページ制作のポイント

インバウンド需要が高まる大分県の観光業・宿泊業向けに、多言語対応ホームページ制作のポイントを解説。言語の優先順位、翻訳品質、決済システム、SEO対策まで網羅的に紹介します。

大分県のインバウンド市場と多言語対応の現状

2024年、訪日外国人観光客数はコロナ前を上回る勢いで回復しています。大分県でも別府温泉、湯布院、九重高原などの観光地で外国人観光客の姿が目立つようになりました。

大分県のインバウンドデータ

大分県を訪れる外国人観光客の傾向

  • 主な訪問国:
    1. 韓国(最多)
    2. 台湾
    3. 中国
    4. 香港
    5. 欧米・その他
  • 人気観光エリア: 別府市、由布市(湯布院)、竹田市、九重町
  • 滞在パターン: 九州周遊ルートの一部として訪問(福岡→別府・湯布院→熊本)

現状の課題

しかし、大分県内の観光施設・宿泊施設の多くは、ホームページの多言語対応が不十分な状態です。

  • 日本語のみ、または機械翻訳の英語のみ
  • 予約フォームが日本語のみで、外国人が予約できない
  • 決済手段がクレジットカードに対応していない
  • アクセス情報が日本語表記のみ(駅名、バス停名など)

「別府温泉に泊まりたかったけど、ホームページが日本語だけで予約方法が分からず、他の温泉地に変更した」という外国人観光客の声は少なくありません。多言語対応の有無が、機会損失に直結しているのです。

なぜ多言語対応ホームページが必要なのか

多言語対応ホームページは、単なる「親切」ではなく、ビジネス戦略として不可欠です。その理由を5つの視点から解説します。

1. 売上・予約数の増加

自国語で情報を得られると、予約率が大幅に向上する傾向があります。特に宿泊業では、直接予約が増えることで予約サイトの手数料を削減できます。

導入事例:別府市内の旅館A館では、中国語・韓国語対応を実施した結果、外国人予約が大幅に増加。OTA依存度が低下し、利益率が大幅に改善しました。

2. ターゲット層の拡大

日本語のみのホームページは、日本人と日本語が理解できる一部の外国人にしか情報が届きません。多言語対応により、潜在顧客が数倍に拡大します。

3. ブランドイメージの向上

多言語対応は「外国人を歓迎している」というメッセージになり、選ばれる理由になります。口コミサイトでの評価向上にもつながります。

4. トラブルの予防

チェックイン・チェックアウト時間、キャンセルポリシー、館内ルールなどを事前に母国語で理解してもらうことで、トラブルやクレームを未然に防げます

5. 競合との差別化

大分県内でも、多言語対応が進んでいる施設はまだ少数派です。今のうちに対応することで、競合優位性を確保できます。

補助金活用のチャンス

大分県や各自治体では、インバウンド対策のための補助金・助成金が用意されています。多言語ホームページ制作費用の一部が補助される可能性があるので、各自治体の商工観光課に問い合わせてみましょう。

対応すべき言語の優先順位と選定基準

「何ヶ国語に対応すればいいの?」という質問をよくいただきます。答えは、ターゲット市場と予算のバランスです。

大分県の観光業・宿泊業におすすめの言語構成

【必須】英語

理由:世界共通語であり、英語圏の観光客だけでなく、欧州やアジア圏の旅行者も英語でサイトを閲覧します。最低限、英語対応は必須です。

優先度:★★★★★

【重要】中国語(簡体字・繁体字)

理由:中国・台湾・香港からの観光客が多く、購買力も高い。簡体字(中国本土)と繁体字(台湾・香港)の両方対応が理想ですが、予算に応じて優先順位を決めましょう。

優先度:★★★★☆

大分県の場合:台湾からの観光客が多いため、繁体字を優先するのがおすすめです。

【重要】韓国語

理由:大分県への訪問者数が最も多い国。特に別府・湯布院は韓国人観光客に人気が高く、リピーター率も高いです。

優先度:★★★★★

【オプション】その他の言語

タイ語、ベトナム語、フランス語、スペイン語など、ターゲット市場に応じて追加します。ただし、運用コストが増えるため、まずは上記3〜4言語で開始し、効果を見て拡大するのが現実的です。

優先度:★★☆☆☆

予算別の推奨言語構成

予算規模 推奨言語 備考
小規模
〜50万円
日本語 + 英語 最低限の対応。英語は必須です。
中規模
50〜100万円
日本語 + 英語 + 韓国語 + 中国語(繁体字) 大分県の主要インバウンド市場をカバー。最もバランスが良い構成です。
大規模
100万円〜
上記 + 中国語(簡体字)+ タイ語など 本格的なインバウンド展開を目指す場合。

段階的導入のすすめ

一度に全言語対応するのではなく、段階的に導入するのが賢明です。まず英語・韓国語で開始し、予約データを分析しながら中国語を追加する、というように進めましょう。

翻訳の質を高める5つの方法

多言語対応で最も重要なのは翻訳の質です。機械翻訳だけに頼ると、不自然な表現やニュアンスの違いで信頼を失う可能性があります。

❌ やってはいけない翻訳方法

  • Google翻訳をそのまま掲載 - 不自然な表現が多く、プロフェッショナルな印象を損ねます
  • 自動翻訳プラグインのみ - 専門用語や固有名詞の翻訳精度が低い
  • ネイティブチェックなしの素人翻訳 - 意図しない意味になる可能性があります

⭕ 推奨される翻訳方法

1

プロの翻訳会社に依頼

メリット:高品質で、業界用語や観光用語にも精通している
コスト:1言語あたり3〜10万円(ページ数による)
おすすめ度:

予算に余裕があれば最もおすすめ。特に重要なページ(トップ、プラン紹介、予約ページ)は必ずプロに依頼しましょう。

2

機械翻訳 + ネイティブチェック

メリット:コストを抑えつつ、ある程度の品質を確保
コスト:ネイティブチェック費用のみ(1言語2〜5万円)
おすすめ度:

DeepLやGoogle翻訳で一次翻訳を作成し、その言語のネイティブスピーカーに最終チェックしてもらう方法。バランスが良いです。

3

クラウドソーシングでネイティブに依頼

メリット:比較的安価で、ネイティブの感覚を反映
コスト:1言語1〜3万円
おすすめ度:

ランサーズやクラウドワークスなどで、その言語のネイティブライターに依頼する方法。品質にばらつきがあるので、実績を確認しましょう。

4

翻訳支援ツール(CAT)の活用

メリット:過去の翻訳資産を活用でき、更新時のコストを削減
コスト:ツール使用料 月額数千円〜
おすすめ度:

SDL TradosやMemoQなどのツールを使うと、一度翻訳した表現を再利用でき、表記ゆれを防げます。

5

専門用語集(グロッサリー)の作成

メリット:固有名詞や館内用語の表記を統一できる
コスト:作成時間のみ
おすすめ度:

例:「露天風呂 = Open-air bath(英)/ 노천탕(韓)/ 露天溫泉(繁)」のように、重要な用語の訳語を統一します。これを翻訳者に渡すことで、品質が安定します。

文化的配慮も忘れずに

単純な言葉の置き換えだけでなく、文化的な配慮も必要です。

  • 色の使い方:中国では赤が縁起の良い色、白は葬儀のイメージがあります
  • 数字:中国・韓国では「4」は避けられる数字です(部屋番号など)
  • 宗教的配慮:ハラール対応の有無、礼拝場所の案内など
  • 支払い方法:各国で主流の決済手段が異なります(後述)

予約システムの多言語対応と決済方法

ホームページが多言語でも、予約システムが日本語のみだと意味がありません。予約〜決済までスムーズに完結できる仕組みが必要です。

多言語予約システムの選択肢

オプション1:多言語対応予約システムの導入

おすすめサービス:

  • Airbnb / Booking.com: 既に多言語対応済み。手数料がかかるが、集客力は高い
  • トリップアドバイザー(Tripadvisor): 口コミからの予約導線を作れる
  • 自社サイト用:
    • 「ねっぱん!」- 旅館・ホテル向け多言語予約システム
    • 「Beds24」- 多言語・多通貨対応の予約管理システム
    • 「サイトコントローラー」- 複数OTAと自社サイトを一元管理

コスト:月額1万円〜 + 予約手数料(売上の3〜10%)

オプション2:メール予約フォーム

多言語のメールフォームを用意し、メールでのやり取りで予約を受け付ける方法。システム導入コストは不要ですが、手間がかかります。

コスト:ほぼ無料(フォーム作成ツールの利用料のみ)

即時予約確定ができないため、予約率は下がります。

オプション3:電話・チャット予約

WhatsApp、WeChat、LINEなどのメッセージアプリで予約を受け付ける方法。アジア圏では一般的です。

コスト:無料(スタッフの対応時間のみ)

多言語対応スタッフが必要です。翻訳アプリを活用する手もあります。

決済方法の多様化

国によって主流の決済手段が異なります。できるだけ多くの選択肢を用意しましょう。

クレジットカード(必須)

VISA、Mastercard、JCB、American Express、Diners Clubに対応。特に海外ではVISA/Mastercardが主流です。

Alipay(アリペイ)- 中国

中国人観光客の90%以上が利用するモバイル決済サービス。対応すると予約率が大幅に向上します。

WeChat Pay(ウィーチャットペイ)- 中国

Alipayと並ぶ中国の二大決済サービス。両方対応が理想です。

PayPay / LINE Pay - アジア圏

日本在住の外国人や、日本に慣れたリピーター向け。

PayPal - 欧米圏

欧米の旅行者に人気。国際決済に強く、買い手保護制度があるため信頼されています。

現地決済(現金・カード)

事前決済が不安な旅行者向けに、現地決済も選択肢として残しましょう。その場合、キャンセルポリシーを明確に提示します。

決済代行サービスの活用

「Stripe」「PayPal」「GMOペイメントゲートウェイ」などの決済代行サービスを使うと、複数の決済手段を一括で導入できます。初期費用や月額費用がかかりますが、予約率向上のメリットは大きいです。

UI/UXで配慮すべきポイント

多言語サイトは、単に言語を切り替えるだけではなく、使いやすさ(UI/UX)にも配慮が必要です。

1. 言語切り替えボタンの配置

ヘッダー右上など、常に見える位置に配置します。国旗アイコンを使うと直感的ですが、言語名も併記すると親切です。

良い例:

2. テキスト量の違いへの対応

言語によって文字数が大きく異なります。英語は日本語の約1.5倍、韓国語は1.2倍の長さになることが多いです。デザインが崩れないよう、可変レイアウトにしましょう。

3. フォントの選定

日本語フォントが中国語・韓国語では読みづらいことがあります。言語ごとに最適なフォントを指定しましょう。

  • 日本語:Noto Sans JP、Yu Gothic、Hiragino など
  • 英語:Open Sans、Roboto、Lato など
  • 中国語:Noto Sans SC(簡体字)、Noto Sans TC(繁体字)
  • 韓国語:Noto Sans KR

4. 画像内のテキスト

画像内に日本語テキストが入っていると、他言語では意味が分かりません。画像内のテキストは最小限にするか、言語ごとに画像を用意します。

5. アクセス情報の工夫

駅名、バス停名は、現地の表記(英語・ローマ字)と併記します。Google Mapsの埋め込みも効果的です。

良い例:
別府駅(Beppu Station)から徒歩15分
バス停「観海寺(Kankaji)」下車すぐ

6. アイコンの活用

言語に依存しないアイコンを使うと、直感的に理解しやすくなります。

  • Wi-Fi無料
  • 駐車場あり
  • 温泉
  • レストラン
  • 禁煙

7. スマホ最適化

外国人観光客の80%以上がスマホでホームページを閲覧します。レスポンシブデザインは必須です。

多言語SEOと検索エンジン対策

せっかく多言語対応しても、検索エンジンに認識されなければ意味がありません。多言語SEOの基本を押さえましょう。

1. hreflang タグの設定(重要)

Googleに「このページには他言語版がありますよ」と伝えるタグです。これがないと、検索結果で適切な言語が表示されません。

<link rel="alternate" hreflang="ja" href="https://yojitu.com/" />
<link rel="alternate" hreflang="en" href="https://yojitu.com/en/" />
<link rel="alternate" hreflang="ko" href="https://yojitu.com/ko/" />
<link rel="alternate" hreflang="zh-Hant" href="https://yojitu.com/zh-hant/" />

2. URL構造の決定

多言語サイトのURL構造には、いくつかのパターンがあります。

方式 メリット デメリット
サブディレクトリ example.com/en/
example.com/ko/
SEO効果が分散しない
管理しやすい
-
サブドメイン en.example.com
ko.example.com
サーバーを分けられる SEO効果が分散
別ドメイン example.co.kr
example.cn
現地でのSEOに有利 コスト高、管理が煩雑

おすすめ:サブディレクトリ方式(example.com/en/)が最もバランスが良いです。

3. 各言語ごとにメタタグを最適化

タイトルタグ、メタディスクリプションは、各言語でネイティブが検索しそうなキーワードを含めましょう。単純な翻訳ではなく、その言語での自然な表現にします。

日本語:
<title>別府温泉 旅館〇〇 | 源泉かけ流しの露天風呂</title>

英語:
<title>Beppu Onsen Ryokan 〇〇 | Natural Hot Spring Resort</title>

韓国語:
<title>벳푸온천 료칸 〇〇 | 천연 온천 리조트</title>

4. 多言語サイトマップの作成

sitemap.xmlに全言語のページを含め、Google Search Consoleに登録します。

5. 現地の検索エンジン対策

Googleだけでなく、各国の主要検索エンジンにも対応しましょう。

  • 中国:Baidu(百度)- 中国国内からのアクセスが重要ならBaidu対策が必須
  • 韓国:Naver(ネイバー)- 韓国で最も人気の検索エンジン
  • ロシア:Yandex - ロシア語圏で強い

具体的な実装方法とツール紹介

多言語サイトを実装する方法はいくつかあります。予算や技術レベルに応じて選びましょう。

方法1:WordPress + プラグイン

おすすめプラグイン:

  • WPML(有料):最も人気の多言語プラグイン。機能が豊富で、SEO対策もバッチリ。年間39ドル〜
  • Polylang(無料/有料):無料版でも基本機能は十分。軽量で使いやすい
  • TranslatePress(無料/有料):ビジュアルエディターで翻訳できる。初心者向け
  • Weglot(有料):自動翻訳+手動修正が可能。最速で導入できる。月額9.9ユーロ〜

おすすめ度:

方法2:静的HTMLサイト + 手動翻訳

各言語ごとにHTMLファイルを作成する方法。小規模サイト向け。

メリット:シンプルで分かりやすい、サーバー負荷が少ない
デメリット:更新時に全言語のファイルを修正する必要がある

おすすめ度:

方法3:自動翻訳ウィジェット

Google翻訳ウィジェットをサイトに埋め込む方法。最も手軽ですが、品質は低いです。

メリット:無料、設置が簡単
デメリット:翻訳精度が低い、SEO効果がない

おすすめ度:(非推奨)

方法4:CMSの多言語機能を活用

専用の旅館・ホテル向けCMSには、最初から多言語対応機能が付いているものがあります。

例:

  • 「らく通」- 宿泊施設向けCMS、多言語・予約システム一体型
  • 「TripAdvisor for Business」- トリップアドバイザーの公式ツール

おすすめ度:

初心者におすすめの構成

WordPress + WPML(またはPolylang)+ DeepL翻訳 + ネイティブチェックの組み合わせが、コストと品質のバランスが良く、おすすめです。

運用・更新時の注意点

多言語サイトは、運用・更新の手間も考慮する必要があります。作って終わりではなく、継続的な運用が成功の鍵です。

1. 更新時の翻訳フロー

新しいプランや料金変更など、情報を更新する際は全言語を同時に更新します。日本語だけ更新して他言語が古いままだと、トラブルの元になります。

推奨フロー:

  1. 日本語で新しい情報を作成
  2. 翻訳(プロ or ネイティブチェック)
  3. 全言語を同時に公開
  4. 更新日を記載する

2. 問い合わせ対応体制

多言語サイトを公開すると、外国語での問い合わせが来ます。対応体制を整えましょう。

  • 翻訳ツールの活用:DeepL、Google翻訳で内容を理解し、返信も翻訳
  • テンプレート返信:よくある質問への回答を各言語で用意
  • 多言語対応スタッフ:留学生アルバイトや外国人スタッフの採用
  • 外部委託:多言語コールセンターサービスの利用

3. 効果測定

Google Analyticsで、言語別のアクセス数や予約率を定期的に確認します。効果の低い言語は一時的に非公開にし、リソースを集中させるのも一つの手です。

確認すべき指標:

  • 言語別アクセス数
  • 言語別コンバージョン率(予約率)
  • 言語別離脱率(どのページで離脱しているか)
  • 言語別平均滞在時間

4. 法的な注意事項

海外からの予約を受け付ける場合、各国の消費者保護法や個人情報保護法にも配慮が必要です。特に、

  • GDPR(EU一般データ保護規則):EU圏の顧客情報を扱う場合は対応が必要
  • キャンセルポリシー:各言語で明確に記載し、トラブルを防ぐ
  • 利用規約:主要言語版を用意する

まとめ

大分県の観光業・宿泊業にとって、多言語対応ホームページは今後のビジネス成長に不可欠です。訪日外国人観光客は今後さらに増加すると予測されており、早めの対応が競争優位につながります。

本記事のポイント

  1. 対応言語:英語は必須。韓国語・中国語(繁体字)を優先し、予算に応じて拡大
  2. 翻訳の質:機械翻訳だけでなく、ネイティブチェックを入れて品質を担保
  3. 予約システム:多言語対応の予約システムを導入し、決済手段も多様化
  4. UI/UX:言語切り替えボタン、スマホ最適化、アイコン活用で使いやすく
  5. SEO:hreflangタグ、各言語のメタタグ最適化、多言語サイトマップが重要
  6. 実装方法:WordPress + プラグインが最もバランスが良い
  7. 運用:更新時は全言語同時、問い合わせ対応体制も整える

次のアクションステップ

Step 1

現状分析
自社サイトの訪問者を分析し、どの国からのアクセスが多いかGoogleアナリティクスで確認

Step 2

予算決定
多言語化にかけられる予算を決め、対応言語を選定

Step 3

実装方法の選定
WordPress、自社開発、外部委託など、最適な方法を選ぶ

Step 4

翻訳・制作
プロの翻訳会社またはネイティブチェックを入れて制作

Step 5

公開・効果測定
公開後、アクセス解析で効果を測定し、改善を繰り返す

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