ホームページとSNS、どちらか一方だけではダメな理由
「ホームページを作ったのに、SNSも必要なんですか?」「InstagramやFacebookでお客様とつながっているから、ホームページはいらないのでは?」
こうした疑問を抱く経営者の方は少なくありません。しかし結論から言えば、ホームページとSNSは、それぞれ役割が異なる別物であり、両方を適切に活用することで初めて最大の効果が得られます。
SNSだけに頼るリスク
- アカウント停止リスク:規約変更や違反判定で突然アカウントが使えなくなる可能性
- プラットフォーム依存:SNS運営会社の方針変更に振り回される
- 情報の流れやすさ:投稿がタイムラインに埋もれてしまい、重要な情報が届かない
- 信頼性の問題:公式ホームページがないと「怪しい」と思われることも
- 検索エンジンからの流入が少ない:GoogleなどでSNSアカウントはあまり上位表示されない
ホームページだけでは足りない理由
- 更新頻度の低さ:ホームページは更新しづらく、情報発信のスピード感が出ない
- 拡散力の弱さ:ホームページの情報は自然には広まらない
- 親近感の不足:企業の「人間らしさ」や「日常」を伝えにくい
- 双方向コミュニケーションの難しさ:お客様との気軽なやり取りがしづらい
このように、ホームページとSNSはそれぞれに長所と短所があります。どちらか一方だけでは不十分で、両方を組み合わせることで相乗効果が生まれるのです。
ホームページとSNSの決定的な違い
| 比較項目 | ホームページ | SNS |
|---|---|---|
| 情報の性質 | ストック型(蓄積される) | フロー型(流れていく) |
| 更新頻度 | 月1回〜数ヶ月に1回 | 毎日〜週数回 |
| 情報の寿命 | 長い(数年間有効) | 短い(数時間〜数日) |
| 検索性 | ◎ Google検索で上位表示可能 | △ 検索エンジンからは見つかりにくい |
| 拡散力 | △ 自然拡散は期待できない | ◎ シェア・リツイートで拡散 |
| 信頼性 | ◎ 公式情報として高い信頼性 | ○ カジュアルな情報源 |
| コミュニケーション | △ 一方向的 | ◎ 双方向・リアルタイム |
| デザインの自由度 | ◎ 完全に自由 | △ プラットフォームの制約あり |
| 所有権 | ◎ 完全に自社資産 | △ プラットフォーム依存 |
| コスト | 初期費用高め、維持費低め | 初期費用ゼロ、運用の手間大 |
この表からわかるように、ホームページとSNSは補完関係にあります。ホームページが苦手とする「拡散力」「双方向コミュニケーション」をSNSが補い、SNSが苦手とする「信頼性」「検索性」「情報の蓄積」をホームページが補うのです。
ストック型とフロー型の特性を理解する
ストック型(ホームページ)
定義:情報が蓄積され、後から何度でも見返すことができるメディア
特徴:
- 作成した情報が資産として残り続ける
- 検索エンジン経由で長期間集客できる
- 過去の情報も現在の情報と同じように価値がある
- 体系的に情報を整理できる
向いている情報:
- 会社概要、事業内容、サービス紹介
- 料金表、アクセス情報、営業時間
- よくある質問(FAQ)
- 専門的な解説記事やノウハウ
- 導入事例、実績紹介
フロー型(SNS)
定義:情報が時系列で流れていき、新しい情報が次々と古い情報を押し流すメディア
特徴:
- リアルタイム性が高い
- 「いま」「ここ」の情報を伝えやすい
- 拡散力があり、バズる可能性がある
- 親近感や臨場感を演出できる
向いている情報:
- 新商品・新サービスのお知らせ
- キャンペーン情報、期間限定情報
- 日常の業務風景、スタッフ紹介
- イベント告知、参加レポート
- お客様とのコミュニケーション
理想的な使い分けパターン
SNSで興味を引き → ホームページで詳しく説明 → SNSで継続的にコミュニケーション
SNSで認知獲得
日々の投稿で存在を知ってもらう
ホームページで詳細確認
興味を持った人が公式サイトで詳しく調べる
問い合わせ・購入
信頼できると判断し、行動に移す
SNSでファン化
継続的な関係構築とリピート促進
ホームページが得意なこと・SNSが得意なこと
ホームページが得意なこと
1. 信頼性の担保
「公式ホームページがある」という事実そのものが信頼につながります。特にBtoB取引では、ホームページの有無が取引の可否を分けることも。
2. SEO対策による集客
適切にSEO対策されたホームページは、Google検索で上位表示され、能動的に情報を探している「購買意欲の高いユーザー」を集客できます。
3. 詳細な情報提供
文字数制限がないため、サービス内容、料金体系、事例紹介など、詳細な情報を体系的に掲載できます。
4. コンバージョンポイントの設置
問い合わせフォーム、資料請求、予約システムなど、具体的なアクションを促す仕組みを自由に設計できます。
5. ブランディング
デザイン、色使い、レイアウトを完全に自由にコントロールでき、企業のブランドイメージを正確に表現できます。
6. データの蓄積と分析
Googleアナリティクスなどで詳細なアクセス解析ができ、改善に活かせます。
SNSが得意なこと
1. リアルタイム情報の発信
「本日のランチメニュー」「臨時休業のお知らせ」など、タイムリーな情報を即座に届けられます。
2. 拡散・バズによる認知拡大
魅力的なコンテンツはシェア・リツイートされ、フォロワー以外にも届きます。1つの投稿が数万人に届くことも。
3. 双方向コミュニケーション
コメント、DM、リプライなどで、お客様と気軽にやり取りできます。質問への回答、口コミへの返信などが可能。
4. 人間味・親近感の演出
スタッフの日常、商品ができるまでの過程など、「人」が見える情報で親しみやすさを表現できます。
5. ビジュアル訴求
特にInstagramは写真・動画が主役。美しい商品写真や動画で視覚的に訴求できます。
6. コミュニティ形成
ファンが集まり、ユーザー同士で情報交換する場を作れます。UGC(ユーザー生成コンテンツ)も期待できます。
7. 無料で始められる
初期費用ゼロ、維持費もかからず、今日から情報発信を開始できます。
効果的な使い分けの実例
【事例1】飲食店の場合
ホームページで掲載すべき情報:
- 店舗概要(住所、営業時間、定休日、アクセス)
- メニュー一覧と料金(標準メニュー)
- 店内の雰囲気がわかる写真
- 予約システム・問い合わせフォーム
- コンセプト、こだわり
- よくある質問(駐車場の有無、個室の有無など)
SNS(Instagram・Facebook)で発信すべき情報:
- 本日のおすすめメニュー、日替わりランチ
- 新メニューのお知らせ
- 料理の調理過程、仕込みの様子
- スタッフの紹介、日常風景
- お客様の声、来店レポート
- 臨時休業・営業時間変更などの緊急連絡
- キャンペーン情報
成功のポイント:Instagramで美味しそうな料理写真を見て興味を持った人が、ホームページで場所や営業時間を確認して来店。来店後、Instagramをフォローしてリピーター化。
【事例2】BtoB企業(ホームページ制作会社など)の場合
ホームページで掲載すべき情報:
- サービス内容の詳細説明
- 料金プラン・見積もり目安
- 制作実績・ポートフォリオ
- お客様の声・導入事例
- 制作の流れ・よくある質問
- 問い合わせ・無料相談の受付
- ブログ(SEO対策記事)
SNS(X・Facebook・LinkedIn)で発信すべき情報:
- 業界ニュース、トレンド情報
- お役立ちTips、ノウハウの一部
- 制作事例の紹介(簡易版)
- セミナー・ウェビナーの告知
- 会社の取り組み、スタッフ紹介
- ブログ記事の更新通知
成功のポイント:SNSで専門性をアピールし、ブログ記事へ誘導。SEOで検索流入も獲得。両方から流入したユーザーが問い合わせフォームから連絡。
【事例3】小売店・ECサイトの場合
ホームページ(ECサイト)で掲載すべき情報:
- 全商品のカタログ・詳細スペック
- 購入・決済システム
- 配送・返品ポリシー
- よくある質問・お問い合わせ
- 会社概要・特定商取引法表記
SNS(Instagram・X・LINE)で発信すべき情報:
- 新商品の先行告知・入荷情報
- 商品の使い方、コーディネート例
- タイムセール・クーポン配布
- お客様の使用例紹介(UGC活用)
- スタッフのおすすめ商品
- 舞台裏・商品開発ストーリー
成功のポイント:SNSで商品の魅力を伝え、「買いたい」と思った人をECサイトへ誘導。LINE公式アカウントでクーポン配布し、リピート購入を促進。
ホームページとSNSの連携方法
1. ホームページ → SNSへの導線
具体的な施策:
- SNSボタンの設置:ヘッダー・フッターに各SNSのアイコンを配置
- 埋め込みウィジェット:Instagramフィード、Twitterタイムラインをホームページ内に表示
- フォロー促進:「最新情報はInstagramで!」などの誘導文を配置
- シェアボタン:ブログ記事などに「この記事をシェア」ボタンを設置
SNSリンクボタンの設置例(HTML):
<div class="sns-links">
<a href="https://www.instagram.com/your_account/" target="_blank" rel="noopener">
<i class="fab fa-instagram"></i> Instagram
</a>
<a href="https://www.facebook.com/your_page/" target="_blank" rel="noopener">
<i class="fab fa-facebook"></i> Facebook
</a>
<a href="https://twitter.com/your_account/" target="_blank" rel="noopener">
<i class="fab fa-twitter"></i> Twitter
</a>
</div>2. SNS → ホームページへの導線
具体的な施策:
- プロフィールにURL記載:各SNSのプロフィール欄に必ずホームページURLを記載
- 投稿内でリンク誘導:「詳しくはプロフィール欄のURLから」「ストーリーズにリンク貼ってます」
- 専用ランディングページ作成:SNS経由専用のキャンペーンページを用意
- リンクツール活用:Linktree、lit.linkなどで複数リンクを1つにまとめる(Instagramで有効)
TIP:InstagramのストーリーズやリールからWebサイトへリンクを貼るには、フォロワー1万人以上またはビジネスアカウントでの認証が必要です。それ以下の場合はプロフィールリンクやリンクまとめツールを活用しましょう。
3. 双方向の連携施策
1. コンテンツの使い回し・再編集
- ホームページのブログ記事 → SNSで要約して投稿し、「続きはブログで」と誘導
- SNSで好評だった投稿 → ホームページのブログ記事として詳しく展開
- Instagram投稿 → ホームページのギャラリーに掲載
2. キャンペーンの連動
- 「SNSフォロー&いいねで割引クーポンプレゼント」
- 「ホームページから申し込み+SNSでシェアすると特典」
- 「Instagramで#ハッシュタグ投稿 → ホームページで紹介」
3. データ連携・分析
- GoogleアナリティクスでSNS経由のアクセスを測定
- UTMパラメータで流入元SNSを詳細に把握
- どのSNS投稿が問い合わせにつながったか分析
業種別おすすめSNS活用法
飲食店・カフェ
おすすめSNS:Instagram(メイン)、Facebook、Googleマイビジネス
- Instagram:料理写真、店内の雰囲気、日替わりメニュー
- Facebook:イベント告知、営業時間変更などの重要なお知らせ
- Googleマイビジネス:口コミ管理、地図検索対策
視覚的な魅力が重要な業種なのでInstagramは必須。ハッシュタグ活用で新規顧客獲得。
美容室・サロン
おすすめSNS:Instagram(メイン)、LINE公式アカウント、ホットペッパービューティー
- Instagram:ヘアスタイル事例、ビフォーアフター、スタイリスト紹介
- LINE:予約受付、リマインド配信、クーポン配布
ポートフォリオとしてInstagramを活用。LINE予約で利便性向上。
宿泊施設・観光業
おすすめSNS:Instagram、Facebook、YouTube
- Instagram:施設の写真、周辺観光地、宿泊者の投稿シェア
- Facebook:イベント情報、地域情報、詳しい記事
- YouTube:施設紹介動画、観光スポット紹介
旅行前に情報収集する層にリーチ。UGC(ユーザー投稿)の活用が効果的。
BtoB企業・士業
おすすめSNS:X(旧Twitter)、Facebook、LinkedIn、note
- X:業界ニュース、専門知識の発信、タイムリーな情報共有
- LinkedIn:ビジネス向け情報、企業としての取り組み
- note:長文でのノウハウ提供、事例紹介
専門性のアピールが重要。有益な情報発信で信頼構築。
小売店・EC
おすすめSNS:Instagram、X、LINE公式アカウント、TikTok
- Instagram:商品紹介、コーディネート提案、ショッピング機能活用
- X:新商品情報、タイムセール告知
- LINE:会員証、クーポン配布、セグメント配信
- TikTok:若年層向け、商品の使い方動画
Instagramショッピング機能で直接購入導線を。LINE会員でリピーター育成。
教育・スクール
おすすめSNS:YouTube、Instagram、X、Facebook
- YouTube:授業の一部公開、体験レッスン動画、生徒の成果発表
- Instagram:授業風景、イベントレポート、講師紹介
- X:教育に関するTips、業界ニュース
動画コンテンツで「どんな授業か」を見せる。保護者の安心感獲得。
まとめ:相乗効果を生む使い分けを
本記事のポイント
- ホームページとSNSは補完関係
どちらか一方だけでは不十分。それぞれの長所を活かして組み合わせることで最大の効果を発揮 - ストック型とフロー型の違いを理解
ホームページは情報を蓄積し、検索エンジンから長期的に集客。SNSはリアルタイム性と拡散力で認知拡大 - 役割分担を明確に
ホームページ:公式情報、詳細説明、コンバージョン
SNS:日常発信、コミュニケーション、拡散 - 連携が成功の鍵
SNSで興味を引き、ホームページで詳しく説明、SNSで継続的に関係構築という流れを作る - 業種・目的に合わせたSNS選び
すべてのSNSに手を出すのではなく、ターゲット層がいるSNSに集中
今日から始められるアクションプラン
初級編(まず最初にやること)
- ホームページにSNSリンクボタンを設置する
- SNSのプロフィールにホームページURLを記載する
- ホームページとSNSで発信する情報を整理・役割分担する
中級編(慣れてきたらチャレンジ)
- ブログ記事をSNSで要約して定期的にシェア
- SNS限定キャンペーンを実施してフォロワー増加
- Googleアナリティクスで流入元SNSを分析
上級編(本格的な運用)
- 各SNSの投稿スケジュールを作成し、計画的に運用
- UGC(ユーザー生成コンテンツ)を活用したキャンペーン実施
- SNS広告とホームページのランディングページを連動
- インフルエンサーとのタイアップで認知拡大