ブランディングと一口に言っても、実は様々な種類があります。企業ブランディング、商品ブランディング、個人ブランディング——それぞれに特性があり、目的に応じて使い分ける必要があります。本記事では、主要な5つのブランディング種類とその選び方を解説します。
ブランディングの5つの主要タイプ
1. 企業ブランディング(コーポレートブランディング)
対象:企業・組織全体
目的:企業の存在価値、理念、文化を社内外に浸透させる
効果:採用力強化、取引先との信頼構築、社員のエンゲージメント向上
2. 商品ブランディング(プロダクトブランディング)
対象:個別の商品・サービス
目的:特定の商品を競合と差別化し、顧客の選択肢に入れる
効果:価格競争からの脱却、リピート購入の促進、口コミ拡散
具体例:
- AppleのiPhone(革新性・デザイン性)
- コカ・コーラ(爽快感・幸福感)
- 地域特産品の高付加価値化(大分の関あじ・関さばなど)
3. 個人ブランディング(パーソナルブランディング)
対象:個人(経営者、専門家、インフルエンサー)
目的:個人の専門性・人格・価値観を発信し、信頼を獲得
効果:案件獲得、講演依頼、メディア露出、採用応募増加
特にBtoB企業では、「会社名」より「社長の名前」で認知されることも多く、個人ブランディングが企業の成長に直結します。
詳しくは:個人ブランディングの始め方|7ステップで構築する自分ブランド
4. 採用ブランディング(リクルートブランディング)
対象:求職者・潜在的な人材
目的:「この会社で働きたい」と思われる魅力を構築
効果:応募数増加、ミスマッチ減少、離職率低下、採用コスト削減
| 施策例 | 効果 |
|---|---|
| 社員インタビュー動画の公開 | リアルな働き方が伝わり、応募者の納得感向上 |
| 社内イベント・文化の発信 | 「楽しそうな職場」というイメージ形成 |
| 福利厚生・キャリアパスの明示 | 長期的なキャリア形成への安心感 |
5. 地域ブランディング(プレイスブランディング)
対象:都市・地域・観光地
目的:地域の魅力を再定義し、観光客・移住者・投資を呼び込む
効果:観光客増加、移住者獲得、地域経済活性化、地域住民の誇り醸成
大分県の地域ブランディング事例:
- 別府市:「温泉のまち」から「ONSENツーリズム」へ進化。外国人観光客に向けた体験型コンテンツで差別化
- 由布市(湯布院):「女性が憧れる温泉地」というブランディングで、観光単価を大幅に向上
- 竹田市:「日本のマチュピチュ・岡城」として歴史資産を活用したブランド構築
どのブランディングを選ぶべきか?4つの判断基準
判断基準1:ビジネスモデルで選ぶ
- BtoB企業:企業ブランディング + 個人ブランディング(社長・営業担当者)
- BtoC企業:商品ブランディング中心、企業ブランディングは補助的に
- スタートアップ:創業者の個人ブランディングから始め、徐々に企業ブランディングへ移行
判断基準2:経営課題で選ぶ
| 経営課題 | 推奨ブランディング |
|---|---|
| 売上が伸び悩んでいる | 商品ブランディング |
| 価格競争に巻き込まれている | 商品ブランディング + 企業ブランディング |
| 採用が上手くいかない | 採用ブランディング |
| 社員のモチベーションが低い | 企業ブランディング(インナーブランディング) |
| 知名度がない | 個人ブランディング(SNS・メディア露出) |
判断基準3:リソースで選ぶ
予算・人員が限られている場合:
- まずは個人ブランディング(社長・キーパーソンのSNS発信)
- コストをかけずに始められ、即効性がある
中規模予算がある場合:
- 商品ブランディング(パッケージリニューアル、広告展開)
- 売上に直結しやすい
大規模予算がある場合:
- 企業ブランディング(CI刷新、ブランドムービー制作、社内外への浸透活動)
- 中長期的な企業価値向上を目指す
判断基準4:競合状況で選ぶ
競合が企業ブランディングに注力している場合:
- あえて商品ブランディングや個人ブランディングで差別化
競合が商品スペック競争をしている場合:
- 企業ブランディングで「この会社から買いたい」という感情を醸成
複数のブランディングを組み合わせる「統合ブランディング」
実際には、1つのブランディングだけでなく、複数を組み合わせることで相乗効果が生まれます。
統合ブランディングの成功パターン
パターン1:個人→企業→商品の順で展開
- 社長がSNSで専門知識を発信(個人ブランディング)
- メディア露出が増え、企業の認知度が向上(企業ブランディング)
- 「あの社長の会社の商品なら信頼できる」と商品が売れる(商品ブランディング)
パターン2:商品→企業の順で展開
- 1つの商品がヒットし、ブランド力が確立(商品ブランディング)
- 「あの商品を作っている会社」として企業の信頼性が向上(企業ブランディング)
- 他の商品も売れやすくなる(ハロー効果)