「ブランディングを始めたいけど、何から手をつけていいかわからない」という方へ。本記事では、ブランディングの具体的な進め方を7つのステップに分けて、初心者でも実践できるよう詳しく解説します。
1. ブランディングの全体像
1-1. ブランディングのプロセス
ブランディングは、以下の7つのステップで進めていきます。
- 現状分析:自社と市場を知る
- ターゲット設定:誰に届けるかを明確にする
- ポジショニング:独自の立ち位置を決める
- ブランドコンセプト開発:核となるメッセージを作る
- ブランドアイデンティティ構築:ビジュアルで表現する
- ブランドコミュニケーション:世の中に伝える
- 効果測定と改善:継続的にブラッシュアップ
1-2. 必要な期間と予算の目安
| 項目 | 期間 | 予算目安(中小企業) |
|---|---|---|
| 戦略策定(ステップ1〜4) | 1〜2ヶ月 | 30万円〜80万円 |
| デザイン開発(ステップ5) | 1〜2ヶ月 | 50万円〜150万円 |
| 展開・運用(ステップ6〜7) | 継続的 | 月10万円〜50万円 |
※大分県の中小企業の場合、全体で100万円〜200万円程度が現実的な予算です。
2. ステップ1:現状分析
2-1. 自社分析(内部環境)
まずは、自社のことを客観的に理解します。
分析すべき項目
1. 強み・弱みの洗い出し
- 自社の強みは何か?(技術、品質、サービス、立地、人材など)
- 自社の弱みは何か?(資金力、認知度、マンパワーなど)
2. 実績・リソースの整理
- 過去の成功事例、代表的な実績
- 保有する資産(設備、技術、ノウハウ、人材)
- 活用できる地域資源(大分県ならではの要素)
3. 企業理念・価値観の言語化
- なぜこの事業をしているのか?
- 大切にしている価値観は?
- 社会にどう貢献したいのか?
使えるフレームワーク:3C分析
3C分析
- Customer(顧客):誰が買っているか、ニーズは何か
- Competitor(競合):競合は誰か、何を提供しているか
- Company(自社):自社の強み、リソース
この3つの視点から、自社の立ち位置を理解します。
2-2. 市場分析(外部環境)
次に、市場や競合を調査します。
調査項目
1. 市場規模とトレンド
- 市場は成長しているか、縮小しているか
- どのようなトレンドがあるか
- 今後の見通しは
2. 競合分析
- 主要な競合企業は誰か
- 競合はどんなブランディングをしているか
- 競合の強み・弱みは何か
- 競合が取り込めていない顧客層はいないか
3. 顧客分析
- 既存顧客はどんな人か(属性、ニーズ)
- なぜ自社を選んでくれているのか
- 不満や改善要望は何か
実践的な調査方法
- 既存顧客インタビュー:5〜10人に直接話を聞く
- アンケート調査:Googleフォームなどで実施
- 競合のWebサイト・SNSチェック:どんなメッセージを発信しているか
- 業界レポート:業界団体や調査会社のレポートを参照
2-3. SWOT分析でまとめる
分析結果をSWOT分析でまとめると、戦略が見えてきます。
| 内部環境 | 外部環境 | |||
|---|---|---|---|---|
| プラス要因 | S(強み) | ・技術力が高い ・地元で信頼がある ・社員のスキルが高い |
O(機会) | ・市場が成長中 ・競合が少ない ・補助金が活用できる |
| W(弱み) | ・認知度が低い ・マーケティング経験が少ない ・予算が限られている |
T(脅威) | ・大手の参入 ・価格競争の激化 ・人材不足 |
|
戦略の方向性
- SO戦略:強みを活かして機会をつかむ(最優先)
- WO戦略:弱みを克服して機会をつかむ
- ST戦略:強みを活かして脅威を回避
- WT戦略:弱みを克服し、脅威を回避(防衛的)
3. ステップ2:ターゲット設定
3-1. ターゲットの重要性
「誰にでも」ではなく、「誰に」届けるかを明確にすることで、メッセージが響きます。
「万人に好かれようとすると、誰にも選ばれない」
3-2. セグメンテーション
市場を細分化し、自社がターゲットにする顧客層を絞り込みます。
セグメント化の軸
| 軸 | 例 |
|---|---|
| 地理的 | 大分県内 / 九州 / 全国 / 特定の市町村 |
| 人口統計的 | 年齢、性別、職業、年収、家族構成 |
| 心理的 | 価値観、ライフスタイル、趣味嗜好 |
| 行動的 | 購入頻度、使用場面、ロイヤルティ |
3-3. ペルソナ設定
ペルソナとは、具体的な顧客像を詳細に設定したものです。
ペルソナ設定の例
名前:田中美咲さん
年齢:35歳
職業:会社員(事務職)
居住地:大分市内(マンション在住)
家族構成:夫、子ども2人(小学生)
年収:世帯年収700万円
価値観:子どもの教育に熱心、健康志向、地産地消を大切にする
悩み:仕事と育児の両立、時間がない、信頼できる情報を探している
情報収集:Instagram、ママ友のクチコミ、地元情報サイト
ペルソナを設定することで、「誰に向けて発信するか」が明確になり、メッセージやデザインの方向性が定まります。
4. ステップ3:ポジショニング
4-1. ポジショニングとは
ポジショニングとは、競合との比較の中で、顧客の心の中に占める独自の位置のことです。
4-2. ポジショニングマップの作成
2つの軸で市場を整理し、自社の立ち位置を決めます。
ポジショニングマップの例(飲食店の場合)
- 縦軸:価格(高価格 ⇔ 低価格)
- 横軸:雰囲気(カジュアル ⇔ フォーマル)
| ↑ 高価格 | ||||
| カジュアル ← |
おしゃれカフェ | 【自社】 高級食材の カジュアルレストラン |
高級日本料理 | → フォーマル |
| ファストフード | 大衆居酒屋 | チェーン和食店 | ||
| ↓ 低価格 | ||||
この例では、「高級食材を使っているが、気軽に入れるカジュアルな雰囲気」という独自のポジションを設定しています。
4-3. USP(独自の売り)の明確化
USP(Unique Selling Proposition)とは、競合にはない自社だけの価値です。
USPの例
- ドミノ・ピザ:「30分以内にお届け、遅れたら無料」
- スターバックス:「第三の場所(サードプレイス)」
- 大分県の温泉旅館:「源泉かけ流し × 地元食材100% × 絶景」
USPは、具体的で、顧客にとってのメリットが明確であることが重要です。
5. ステップ4:ブランドコンセプト開発
5-1. ブランドコンセプトとは
ブランドコンセプトとは、ブランドの核となるメッセージ・約束です。すべてのブランディング活動は、このコンセプトに基づいて行われます。
5-2. ブランドコンセプトの構成要素
主要な要素
1. ブランドビジョン
将来、どうなりたいのか(3〜5年後の姿)
例:「大分県で最も愛される地産地消レストランになる」
2. ブランドミッション
何のために存在するのか(使命)
例:「大分の食材の魅力を、地元の人々に再発見してもらう」
3. ブランドバリュー
大切にしている価値観
例:誠実さ、地域愛、おいしさへのこだわり
4. ブランドプロミス
顧客への約束
例:「県内産食材100%、安心・安全な食事を提供します」
5. ブランドメッセージ
一言で表すキャッチフレーズ
例:「大分の恵みを、あなたの食卓に」
5-3. ブランドストーリー
ブランドコンセプトを物語として語ると、顧客の共感を得やすくなります。
- 創業の想い・きっかけ
- 大切にしている価値観
- これまでの苦労や挑戦
- 顧客に提供したい価値
- 未来のビジョン
6. ステップ5:ブランドアイデンティティ構築
6-1. ビジュアルアイデンティティ(VI)
ブランドコンセプトを視覚的に表現します。
主な構成要素
1. ロゴデザイン
- ブランドの「顔」となる最重要要素
- シンプルで記憶に残るデザイン
- 様々なサイズ・媒体で使用できる
2. カラーパレット
- メインカラー、サブカラーを設定
- 色が与える印象を考慮
- 青:信頼、誠実
- 赤:情熱、エネルギー
- 緑:自然、安心
- 黄:明るさ、親しみ
3. タイポグラフィ(書体)
- 使用するフォントを統一
- ブランドイメージに合った書体選び
4. 写真・イラストのトーン
- 使用する写真のスタイルを統一
- 明るめ/暗め、シャープ/柔らかなど
6-2. ブランドガイドライン
一貫性を保つために、ブランドガイドラインを作成します。
含めるべき内容
- ブランドコンセプト・ストーリー
- ロゴの使用規定(サイズ、余白、禁止事項)
- カラーパレット(RGB、CMYK、HEX値)
- タイポグラフィ
- 写真・イラストの方向性
- トーン&マナー(文章の語調、表現)
7. ステップ6:ブランドコミュニケーション
7-1. タッチポイントの設計
顧客がブランドと接触するすべての接点(タッチポイント)で、一貫したブランド体験を提供します。
主なタッチポイント
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| オンライン | Webサイト、SNS、メール、オンライン広告 |
| オフライン | 店舗、看板、名刺、パンフレット、パッケージ |
| 人的接触 | 接客、電話対応、営業活動 |
| 製品・サービス | 商品の品質、使用体験、アフターサービス |
7-2. コンテンツ戦略
ブランドメッセージを伝えるためのコンテンツを計画的に発信します。
コンテンツの種類
- ブログ記事:専門知識、ハウツー、事例紹介
- SNS投稿:日常、商品紹介、顧客の声
- 動画:製品紹介、舞台裏、ストーリー
- メルマガ:お役立ち情報、キャンペーン
- プレスリリース:新製品、イベント
7-3. SNS活用
SNSは、低コストで始められる効果的なブランディングツールです。
| プラットフォーム | 特徴 | 適した業種 |
|---|---|---|
| ビジュアル重視 | 飲食、美容、ファッション、観光 | |
| X(Twitter) | リアルタイム性、拡散力 | BtoB、IT、ニュース性のある業種 |
| 詳細情報、イベント告知 | 地域ビジネス、BtoB | |
| YouTube | 詳しい説明、ストーリー | 全業種(特に製造業、教育) |
| LINE公式 | 日本で高い利用率、クーポン配信 | 店舗ビジネス全般 |
8. ステップ7:効果測定と改善
8-1. KPI設定
ブランディングの効果を測定するための指標(KPI)を設定します。
主なKPI
| カテゴリ | KPI例 |
|---|---|
| 認知度 | ブランド認知率、Webサイト訪問数、SNSフォロワー数 |
| エンゲージメント | いいね数、コメント数、シェア数、滞在時間 |
| ビジネス成果 | 売上、問い合わせ数、成約率、客単価 |
| ロイヤルティ | リピート率、NPS(推奨度)、レビュー評価 |
8-2. PDCAサイクル
継続的な改善のために、PDCAサイクルを回します。
- Plan(計画):目標とKPIを設定
- Do(実行):ブランディング施策を実施
- Check(評価):KPIを測定・分析
- Act(改善):課題を特定し、施策を修正
最低でも3ヶ月に1回は振り返りを行いましょう。
9. 大分県企業がブランディングで成功するポイント
9-1. 地域資源を活かす
- 温泉:別府・湯布院のブランド力を活用
- 食材:関サバ、豊後牛、かぼすなど
- 自然:海、山、豊かな自然環境
- 文化:伝統工芸、祭りなど
9-2. 「顔が見える」を強みに
大企業にはできない、地域密着・顔の見える関係を強みに変えましょう。
- 経営者や社員が直接SNSで発信
- 地域イベントへの積極的な参加
- お客様一人ひとりとの丁寧なコミュニケーション
9-3. 段階的に進める
すべてを一度に完璧にする必要はありません。小さく始めて、段階的に拡大しましょう。
- Phase 1:ブランドコンセプトとロゴの策定
- Phase 2:Webサイトとオンライン発信
- Phase 3:各種ツールの統一と広告展開
まとめ
ブランディングの7つのステップをまとめます。
ブランディングの進め方
- 現状分析:自社と市場を客観的に理解(SWOT分析)
- ターゲット設定:ペルソナを具体的に設定
- ポジショニング:独自の立ち位置を決定(ポジショニングマップ)
- ブランドコンセプト開発:核となるメッセージを言語化
- ブランドアイデンティティ構築:ロゴ・VI・ガイドライン作成
- ブランドコミュニケーション:タッチポイントで一貫した体験を提供
- 効果測定と改善:KPI設定とPDCAサイクル
ブランディングは、一度やって終わりではなく、継続的なプロセスです。焦らず、着実に進めていきましょう。大分県の中小企業でも、このステップに沿って進めれば、効果的なブランディングが実現できます。
ブランディングの実践をサポート
余日(Yojitsu)では、大分県の企業に寄り添い、ステップごとに丁寧にサポートします。
- 初心者でも安心のステップバイステップ支援
- 戦略からデザイン、運用まで一貫サポート
- 大分県の地域特性を活かした提案
- 段階的な投資で負担を軽減
- 効果測定と継続的な改善支援